暦の上で春立てどもこの季節、木造の家に異常乾燥注意報は大敵ですが、家づくりを始めるには気候がゆるみ、地固め、立柱、上棟にいい時候を迎えます。
さて、「棟割り長屋」とか主屋の外にたてる離れを「別棟」とも用いられる棟は、建物を数えるときの単位・数詞でもあり、建物の象徴とされています。柱、梁とともに主要構造部材のひとつで、家を建てるときの各職方をとりしきる管理者・頭領のことを、建築現場では格別に棟梁とよびます。
建物を建てるとき最初に地鎮祭(式)を催し、基礎工事ののち立柱式、上棟式、瓦棟上式、をへて竣工式とあいなります。生活(諸行事)の簡素化がすすむ現在でも上棟式だけはとりおこなわれる事が多いのですが、それは各式典には建築にたずわる職人たちへの慰労とともに、いい建物にしあげてほしいとの施主の願いがこめられてのことなのですね。
この上棟式では幣ごし(棟札)を棟束に飾りますが、このとき東向きにつけるのが習わしです。「東風吹かば思い起こせよ……」の新年最初に吹く東風を「初東風」と呼ぶとのこと。